上司へのゴマすりは「人事評価にめっちゃ効く」という事実 経験豊富な管理職ほど求められる、バイアスを取り除く訓練 - ログミーBiz
ですけど、それを一般化してしまうようなことをして、いろんなところに適応してきたな、と。私も痛い目にいろいろ遭いました。「リクルートで通用していたこと」が、ライフネットにはぜんぜん合わないとか、オープンハウスには合わないとか。あるいは、コンサルティングとかやってると、もっといろんなところに(合わないということが)あるんですね。
だんだん「リクルート絶対主義」みたいな感じだったのが「いやいや、これはリクルートだからできたんだな」「リクルートの趣味だな」とかですね。「あんまり普遍的じゃないな」とか、そういったことを思ったわけなんですけども。そんな試行錯誤をせずともいろいろわかってることがあったりするので、それを今日はご紹介できればと思ってます。
だから、本当に「目標達成した」とか「行動規範に沿った行動をしている」とかよりは印象操作が効果的でですね。そういう印象操作を受けても、ちゃんとした評価できるようにがんばらなきゃいけないって話なんですけど。その状態でいくと、けっこう効いちゃうんですよね。まずこれがベースであります。
だから「評価者訓練」では、バイアスを避けるってことをものすごくやらないといけないな、と。あとは上司とか上のほうになっていけばいくほど、経験者の方が増えると思うんですけど「優秀人材についての固定観念」も増えるんですよね。
もっと言うと「自分に似てる人を評価する」ってこともあって。採用面接とかでもそうなんですけど「経験者のほうがフラットに人を見られるか?」については「違う」というのがわかってるんですね。むしろ上のほうになればなるほど、人を見る時にフラットに見られるような「バイアスを取り除く訓練」をしなきゃいけない。
だからよく、評価者トレーニングの初任の管理者・若い人に対しては「面接官トレーニング」とかをガンガンやるんだけれども、長く関わってる人には「もう出なくていいですよ」ってこともあると思うんです。「もう10年もやってるから(出なくていい)」とか。
でもそれって、実は逆かもしれないんですよね。そういう人にこそ「こういう人はすごくプラスに評価しがちだけど、こういう人はマイナスに評価しがち」みたいな、自分の誤ったバイアス。これを気づかせるようなワークをやらないといけないかもしれない、ってことです。
要は「本当は無意味なものに顔を見い出す」みたいな知覚作用のことで、これを「過度の一般化」という、悪い言い方をしたりするんですけども。
1回か2回ぐらい何かが起こったら「こいつはこんな奴だ」みたいな感じで、意味づけしてしまうみたいなこと。経営者とかマネージャーって、意思決定がすごく早い人が多いじゃないですか。
これって、事業にはすごくいいですよね。事業では「情報が集まってから判断してたら遅い」みたいなことってあると思うんですけど、人を評価するという意味においては、マイナス効果が多いと。「思い込みが激しい」みたいな話ですよね。だからそういう意味で言うと、経営者は面接下手・評価下手だっていうのは、すごくよく言われることですよね。
ですからこれはめちゃくちゃやりにくいんですけど、本当だったら「経営者に対する評価者訓練」って、めちゃくちゃやらないといけないんですよね。
ところが「最強の人間関係は異質補完」とよく言われまして。違うんだけれども、補い合っている。仲良くなる・分かり合うのに時間かかるんですけど、生産性とか創造性は向上していく、みたいな関係ですね。補完ってちょっと難しくて、バラバラの性格の人と補い合うってどうなってるか? ってことなんですけど。
例えば、(スライドを指しながら)この青いリーダーがいたとしますよね。「信念や執着心が強い人」。その人が「行くぞー!」って言ったら、「はい!」って素直に受け入れる人。この人たち、性格は違うけどもすごくいいチームじゃないですか。または「何がしたい」とか「Will」は別にないんだけれども、やると決まったら段取りがうまいとかね。そういう人は、(「信念や執着心が強い人」の下に付くことが)すごく向いてるわけなんですけど。
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ところが、これって驚くべきこととも言えるんですけど「マネージャーがメンバーの行動記録(えんま帳)をつけてるか?」っていうと、つけてる人って本当に少ないんですよね。これ、残念な話ですけども。そうすると、もうピークエンド効果の法則みたいなものの影響を、バッチリ受けちゃいます。そういう上司は本当にメンバーのことを正しく評価できるんでしょうか? っていうことですね。
あと、これも悲しい効果で。評価をする時、最初に自己評価させたりしますよね。それを元に、マネージャーが二次評価して、最後は評価委員会にかけて、というのがあると思うんですけれども。「バンドワゴン効果」とも言ったりしますけど、最初に自己評価で高くしてる人って下げにくいじゃないですか。
みたいなことがあったりするんで「自己評価をどこまでさせるか?」っていうのは1つ考えどころなんです。なぜかというと「ダニング=クルーガー効果」。これは、ダニングさんとクルーガーさんが発見した悲しい効果なんですけど「能力が低い人は自分を過大評価し、能力が高い人は自分を過小評価する」と。かなり悲しいですよね(笑)。
算数がおもしろくて勉強してる子どもに「100点取ったらおもちゃあげるね」という外発的動機づけを与えると、100点を取るために勉強するようになって「算数はおもしろい」っていうのが消えちゃう。これは「アンダーマイニング効果」っていいますけども、こればっかりが有名になるんですけど。
実は「エンハンシング効果」といって、ほとんどの人事評価って外発的動機づけですからね。もちろん外発的報酬が悪いわけがなくて「自分は有能だ」と認識してがんばる、っていう効果もあるわけですね。
たぶん人事の方の信念としては……僕もそうなんですけど、このアンダーマイニング効果のほうが、なんかいいじゃないですか(笑)。「外発的動機で人は動く」みたいなことを言われると「人間はそんなもんじゃないですよ」と思いたい、ってことかもしれませんけど。外発的動機づけ・内発的動機づけ、どっちでモチベートしたらいいのか? っていう問題もありますね。
だいたい世の中の8割ぐらい(の企業)が目標管理制度を入れてるわけですども。例のドラッカーの「MBO」「Management By Objectives and Self-Control」ですね。「Self-Control」が抜ける場合が多いんですけども。
もともとは「個人の自律性」を出そうと思って行った、マネジメントの考え方の話です。MBOの目標管理制度はどっちかというと「ノルマ化」していくみたいなことがあります。「ノルマ・目標の達成度で測られる」というのが、今の8割の会社が入れてる制度です。
もちろん「何をすればいいかが明確化される」というのはいいことで、評価も明確になるわけですね。ところが「納得度」となると、「ぐうの音も出ないこと」と「納得いくこと」って、僕は違うと思うんですね。
「君、目標が100だったよね。で、これだけやったよね。だから80点です」「……はい、わかりました」みたいな、こういう感じ(笑)。「確かに決めましたけど……」みたいな。
でも、みなさん感じてるのは「目標がそもそも公平じゃない」と。「同じグレードのあいつは簡単な目標なのに、僕の目標って高くないですか?」みたいな話とか。
そもそも定量的な「売上」とかだったら達成度がわかりやすいですけど、定性的なものの達成度って「100いってません?」「いってない」「いってません?」「いってない」みたいな。目標の「公平さ+達成度」という二重のハードルがあるんで、なかなか難しい。
なので最近、目標管理制度をなくすところも増えてきていて。「評価基準はこういう面で見ますよ」って言って、目標は立てない。で、がんばれることまでがんばって、結果を相対評価すれば、二重のハードルから逃れられる。
これ、ちょっとややこしい話でピンとこないかもしれませんけど「結果の相対評価」だけでやっているほうが、文句を感じるところが少なくなるんですね。だから、こっち(目標管理制度なし)でやっている場合もいろいろあります。目標管理制度っていいところはもちろんあるんですけど、最近は合わなくなってきてる会社も増えてますよね。